湯気の中へ、非日常の世界へ:
通過儀礼としてのフィンランドのサウナと日本の風呂
遠く離れた北欧フィンランドと極東日本。気候もそこに暮らす人々も一見全く異なるこのふたつの国に共通する熱い湯気の文化がある。フィンランド人が長い歴史の中で大切にしてきた「サウナ」、そして多くの日本人にとって欠かせない「風呂」。どちらも身体を清潔にする場所というだけではなく、宗教的・文化的意味合いや、癒し、儀礼とも深く関係していると考えられている。1998年にはフィンランドのユヴァスキュラで風呂とサウナに関するエキシビションも催されている。
本発表では、フィンランドと日本での過去20年間のフィールドワークの結果をもとに、サウナと風呂が、それぞれどのようにそこに暮らす人々の人生や日々の生活の節目に行われる通過儀礼(van Gennep 1909)として機能しているのかを明らかにし、サウナと風呂文化に共通して見られるリミナリティー (Turner 1974)を「マクロモデルとマイクロモデル」(Niendorf 2000)を用いて文化人類学的観点から検証する。